体重減少とは
体重減少を分かりやすく言うと「痩せ」のことです。医療で問題となる体重減少は、一般に6か月間に元の体重の5%以上の減少がみられる場合を指します。
ただし、もともと過体重の人が体重を減らす場合はこの限りではありません。また、体重減少の割合が10%以上の場合には原因などの解明を急ぐ必要がある状態で、20%以上となると栄養障害や多臓器障害などを起こしている可能性が高いとされています。
体重減少がある場合において重要になるのは、ダイエットのように「自分の意思によるもの」か「自分の意思によらないもの」かという点です。
自分の意思による体重減少とは、ダイエットのほか、糖尿病などの病気治療のために行う運動療法の結果もこれにあたります。
つまり、問題となり得る体重減少で原因に何らかの病気などが関わっていると考えられるのは、前述の体重減少の程度が継続しているということ、それが自分の意思によらず進んでいるということになります。
ただし、自分の意思による体重減少として「拒食症」として知られる「神経性無食欲症」であるケースもあり医療が必要になることもあります。
なお体重減少は、食事を摂ってからそれらを代謝する過程において、何らかの原因により消費エネルギーとのバランスが悪い状態となり、結果エネルギー不足になるという仕組みで起こります。また、脱水症によっても体重減少を引き起こします。これは体重の2/3の量が水分でできているからです。
体重減少の症状
体重減少が明らかな場合ひとつ大きなポイントとなる症状は、「食欲があるかどうか」です。
そのほか、発熱、動悸・発汗過多、口渇・多飲・多尿、口腔内の状態・嚥下障害、消化器症状(早期膨満感、嘔吐、腹痛、下痢など)、頭痛、血圧上昇、呼吸困難・全身倦怠感、食行動の異常、抑うつ、意欲減退、不眠、不安、などがみられることがあります。
実は、体重減少について患者さん本人が正確に申告できるケースは約半数ほどです。患者さんから聴きとれる情報から、体重減少を疑うこともありますが、これらは例えば、倦怠感、食事が美味しくない、微熱が続く、動悸がする、汗をよくかく、のどが渇く、ベルトの位置が変わった、いつもの洋服が緩くなった、などです。
体重減少の原因
体重減少の原因となる病気はさまざまです。
食欲があるのに体重減少がある場合
- 甲状腺ホルモン過剰分泌:甲状腺機能亢進症
- 糖代謝異常:糖尿病
- 吸収不良症候群:クローン病、慢性膵炎など
- 嚥下機能の低下、口腔内・顎の病気:顎関節症、入れ歯の不具合、口内炎など
- 運動量・エネルギー消費量増加
食欲がなく体重減少がある場合
- 悪性腫瘍:がん(多いのは消化器系)
- 消化器の病気:胃潰瘍、慢性膵炎など
- 膠原病・炎症性腸疾患、感染症:肺結核、膿瘍、HIVなど
- 内分泌代謝異常:副腎不全、アジソン病、糖尿病における自律神経障害、高カルシウム血症、 低ナトリウム血症、サルコイドーシスなど
- 精神疾患:うつ病など
特に高齢者の場合は、認知症、心不全や肺疾患、神経筋疾患など基礎疾患の進行に加え、サルコペニアやフレイルによって食欲不振になることもあります。
また、病気以外では、鎮痛剤、抗糖尿病薬、抗うつ薬、強心剤、気管支拡張剤、抗がん剤などのお薬が原因となることもあります。
体重減少の治療方法
体重減少の治療は、その原因となる病気の治療を進めていくことが基本となります。重症度や検査結果などから、入院治療や専門施設への入院が必要となることもあります。
そのほか、食事の摂り方などを工夫することで、体重減少が改善することもあるため、患者さんの状態に応じて指導を行うこともあります。具体的には、食事を少量に数回にわけて摂る、食事の際に介助者をつける、食間に高カロリーのサプリメントを摂る、食事に香りをつけて味覚低下を補う、などです。
なお、原因がはっきりしない場合などは、経過観察として1~3か月後に体重減少が続いていないか、他に気になる症状が出ていないかなどを確認します。