胃痛とは
胃痛とは、文字のとおり「胃が痛む」という状態です。胃痛を引き起こす病気にはさまざまありますが、このうちの何らかが原因となり胃の粘膜に炎症が起こるなどして、みぞおち付近(腹部の上方中央部分)を中心に痛みを引き起こし、胃痛として認識されます。
胃痛の症状
胃痛の症状とは、みぞおち付近の痛み、胃の不快感や吐き気を伴うこともあります。
シクシクとした痛みやキリキリとした痛み、また程度も軽いものから強いものまで、原因となる病気によって、痛みの感じ方や種類、痛みの出るタイミングもそれぞれです。
胃痛の原因
胃痛を引き起こす原因となる病気には、次のようなものがあります。
急性胃炎
胃の粘膜が炎症を起こした状態になり、胃に突然の痛みが起こるのが特徴です。急性胃炎の原因として、ストレス、暴飲暴食、香辛料やアルコールなど刺激物の過剰摂取、細菌やウィルスの感染、生魚に住みついたアニサキスという寄生虫が胃壁に食いつくことで起こるアニサキス症などが挙げられます。
胃の粘膜を守る粘液と、食べ物を消化する胃液のバランスが崩れることで胃の粘膜に傷ができ、そこが炎症を起こすことで短期間でも胃炎が発生します。
アニサキス症の場合は、食後数時間から10数時間後に、みぞおちに激しい痛みや嘔吐、悪心が起こるのが特徴です。
慢性胃炎
胃の粘膜の炎症が慢性化した状態で、原因となる特定の病気がない場合もあります。
ひと昔前までは、加齢によって起こる症状と考えられていましたが、現在では慢性胃炎のほとんどが、ヘリコバクターピロリ菌の感染により発症するということが分かっています。
通常、胃内に入った菌は胃酸によって死滅しますが、ヘリコバクターピロリ菌は独自の特殊な酵素によって、胃内に住み続けることができます。
その結果、胃の粘膜が何度も炎症を起こし、慢性化してしまうのです。
胃潰瘍
何らかの原因によって傷ついた胃の粘膜は、胃酸に晒されることで穴が開きます。その穴がさらに深い部分に達することで、胃壁の内側にくぼみ状の潰瘍ができた状態が胃潰瘍です。
ヘリコバクターピロリ菌や、鎮痛解熱薬の服用、ストレス、暴飲暴食、刺激物の過剰摂取、細菌・ウィルス感染などが原因となって起こると考えられています。
潰瘍部から出血すると、吐血や黒色便(タール便)がみられる場合もあります。
機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)
上記の病気の症状は見られず、みぞおちの痛みなどが持続するのが特徴です。
胃の運動機能の異常、胃酸分泌の異常、胃の知覚異常、ストレス、ヘリコバクターピロリ菌感染による胃炎など、複合的な要因で発症すると考えられています。
胃痛の検査
痛みがいつから始まったのか、どのように痛むのかなど「痛み」に関することのほか、患者さんの病歴なども診断の際の重要な判断材料となります。
また、病気によって胃痛が起こるタイミングが違うことがあります。食後に胃が痛む場合は食べ過ぎや飲み過ぎのことが多いのですが、胃炎や胃潰瘍の可能性も考えます。
これらをふまえた上で、必要に応じた検査をいくつか行うことで病気を特定します。検査方法としては、胃カメラや腹部エコー、CT検査などがあります。
また、これらの検査と並行してヘリコバクターピロリ菌の有無も確認します。
胃痛の治療法
検査によって病気が確定されたら、それぞれの病気に適した治療を行います。同じ「胃の痛み」でも、痛みの感じ方や痛みの起こるタイミングなどが変わりますし、病気となる原因も違いますから、治療法も変わります。
急性胃炎の場合は、食事制限と原因の除去が主な治療になります。痛みの緩和や、治療を促進するためにお薬による治療も並行して行われます。
また、アニサキス症による急性胃炎の場合は、内視鏡によってアニサキスの幼虫を摘出することになります。 慢性胃炎の根本的な治療法はなく、内視鏡検査でヘリコバクターピロリ菌陽性が判明したら、除菌を行い、経過を見るのが一般的です。
一次除菌で成功しなければ二次除菌を行います。2013年より、除菌治療が保険適用となり、より多くの方が治療を受けることができるようになっています。
胃潰瘍の治療は、症状が軽度の場合は胃酸を抑える薬の服用や注射と、粘膜を保護するお薬を服用します。
潰瘍が大きい場合、また胃痛や潰瘍部の出血による貧血が強い場合は、絶食しながら点滴治療を行い、1~2週間の入院期間で症状や経過を観察することもあります。また、胃カメラ検査で潰瘍からの出血がみられる場合は、金属性のクリップで縛る止血処置をしたり、出血部の血管を焼き固めたりします。
さらに慢性胃炎と同様、ヘリコバクターピロリ菌の感染があれば、除菌治療も行います。 機能性ディスペプシアの治療としては、生活習慣の改善が主になります。
ストレスをためない、脂肪分の多い食事を控える、食べ過ぎなどの食習慣の改善、適度の運動など、規則正しい生活を心がけます。
また、胃運動改善薬など症状に適した薬物療法も並行して行います。