虚血性腸炎
虚血性腸炎とは、腸管の血流障害によって生じる炎症の一つです。特に、下行結腸からS状結腸によく生じる一過性の血流障害のことを指します。
虚血性腸炎の要因は2つに分かれます
1つ目の要因は「血管側因子」で、2つ目は「腸管側因子」です。「血管側因子」とは動脈硬化や血圧の低下などのことを指し、「腸管側因子」とは、腸管内の圧力が上昇したり蠕動運動が活発になり過ぎたりすることを指します。
また、虚血性腸炎は中高年の女性に多くみられる疾患です。 主な症状として、血便や下痢、強い左下腹部痛などが挙げられます。
典型的な例はこのような感じです。
- 夜明けに血便が起こり始め、救急搬送された方
- 以前から高血圧や脂質異常症の治療を受けていて、便秘が続いている方
- 夕食を食べた後に腹痛や下痢が起こり、お腹の左側が痛くなってきた方
まずは問診で状況や症状などをお聞きしてから、感染性腸炎などをきっかけに発症した虚血性腸炎ではないかを調べます。また、下剤の服用によって虚血性腸炎を発症するケースもあります。 大腸カメラ(大腸内視鏡)やCT検査などを行ってから、虚血性腸炎の診断をつけます。 特に大腸カメラを行うと、虚血性腸炎特有の症状が確認できます。
虚血性腸炎の治療
合併症の有無や症状の度合いによって、治療内容は異なります。
軽度の場合は入院せず、消化器官に負担がかからない食事と安静、外来治療で治します。痛みなどがひどい場合は入院していただき、絶食と点滴による治療を行います。軽度でも重度でも治療は行いますが、自然治癒できるまで待つようにします。
ほとんどの患者様は2~4日程度で症状が落ち着きます。
また、重度の炎症から狭窄を起こしてしまった場合でも、時間とともに狭窄が解消されるケースが多く、手術が必要になる確率は非常に低いです。
注意点
感染性腸炎が引き金となって、虚血性腸炎を発症する(二次性疾患)ケースがあります。
感染性腸炎が先述した「腸管側因子」に該当することがあります。
虚血性腸炎を患った患者様が検便検査を受けたところ、約17%に病原性の細菌が見られたという報告もされています。また、感染性腸炎の中には、培養検査を行っても陽性反応になり得ないウイルスによって発症するものもあります。そのため、実際は思っている以上に、多くの感染性腸炎の患者様が隠れている可能性もあるのです。
感染性腸炎を機に発症したことが疑われる虚血性腸炎の場合は、第三者に感染させないよう、感染対策を徹底する必要があると考えられます。