これまで胃潰瘍の原因には、精神的ストレスが主に考えられていましたが、近年になり原因の多くは「ヘリコバクターピロリ菌の感染によるもの」ということが分かってきました。ピロリ菌が、幼少時より胃の中に生息し続けることで、胃の粘膜は持続的に障害され炎症を起こします。さらに、胃酸や粘膜を保護するための粘液の分泌バランスが崩れ、胃粘膜が傷つきやすくなり、潰瘍が発症しやすい環境がつくられてしまいます。
原因として次に多いのが、非ステロイド性抗炎症薬という種類の鎮痛解熱薬などによるものです。頭痛や関節痛などの鎮痛、解熱、体のさまざまな部位の炎症を抑えるために使用されるお薬ですが、「プロスタグランジン」と呼ばれる胃粘膜を保護する物質を抑制する働きがあるため、胃粘膜を守る力が弱まり、潰瘍ができやすくなります。潰瘍がある方や潰瘍になったことがある方の中でも、胃酸が少なくなりやすい高齢者や、非ステロイド性抗炎症薬を処方されることがある脳卒中や心筋梗塞の患者さんは、特に注意が必要です。
その他には、香辛料やコーヒーなどの刺激物の過剰摂取や暴飲暴食などの胃に取り込まれるものが原因となるものや、ストレスや過労、胃腸炎などの細菌・ウィルス感染、遺伝的要因が原因となる場合もあります。