腹痛とは
腹痛とは、言葉の通り「お腹が痛い」という症状です。
一口に「腹痛」と言っても、痛みの部位、程度、痛み方の種類はさまざまです。
しばらくすると治まるような軽い腹痛から、命にかかわるような緊急を要する腹痛まで、原因は多岐にわたります。
腹痛に関連する病気は種類が非常に多く、症状によっては、診断が確定するまで数回の検査が必要となるケースもあります。
腹痛の症状
腹痛の症状としては、よく起こる腹痛、急な腹痛、吐き気や熱などその他の症状をともなうものなど様々です。
単なる腹痛であっても、大きな病気が原因となっている可能性もあります。耐え難いほどの痛みであったり、吐血・下血がみられたりする場合、あるいは痛みが長時間にわたる場合などには、早急に病院を受診しましょう。
腹痛の種類は大きく3つに分けることができます。
1.内臓痛
消化器官が変形するような動きによって起こる痛みです。
例えば下痢のように腸管(大腸)が大きく動いたりすることで起こる痛みなどで、多くの場合はしばらくすると治まります。
2.体性痛
内臓を包む腹膜などが刺激されて起こる持続的な痛みです。例えば虫垂炎が腹膜炎へと進行する場合は、内臓痛から体性痛へと痛みの種類が変わっていきます。
3.関連痛
身体の表面の一部分に起こる痛みで、痛みの原因となっている部分から離れた部分に痛みを感じるのが特徴です。
例えば虫垂炎のときは本来炎症が起きているのは右下腹部ですが、最初は心窩部(みぞおち)に痛みを感じることがあります。
腹痛の原因
腹痛で受診する際、原因としてもっとも多くみられるのが消化器疾患です。代表的といえるのは、以下のような病気です。
感染性胃腸炎
ウィルスや細菌などの病原体が、胃や腸管に感染することで起こります。下痢や発熱のほか、嘔吐などの症状が見られます。
原因となるのはノロウイルスやロタウイルスなどが多く、秋から冬に流行することが多い病気です。
過敏性腸症候群
腹痛やお腹の不調を繰り返したり、便秘や下痢などの便通異常が数か月続いたりするような病気です。主な原因は腸の機能異常と考えられており、ストレスにより症状が強くなるのが特徴です。
消化性潰瘍
胃潰瘍、十二指腸潰瘍のことで、原因のひとつとしてヘリコバクター・ピロリ菌感染が関わっています。
潰瘍からの出血が多くなると、吐血やタール便、貧血が見られるようになります。
胆石症
胆嚢にできる石が原因で起こる病気で、みぞおち付近に激痛があります。
膵炎
飲酒や胆石が原因ですい臓に炎症が起こる病気です。重症化すると命に関わるため、早急な処置が必要です。
消化器の病気以外でも、産婦人科の病気、心・血管・呼吸器系の病気、泌尿器や内分泌系の病気でも、腹痛の原因となります。
例えば、産婦人科疾患で激しい腹痛を伴う病気の一つに、子宮外妊娠があります。
中でももっとも多いのが卵管内での妊娠で、放置すると卵管破裂などにより死に至る可能性があるため、妊娠初期の腹痛には特に注意が必要です。
腹痛の検査
腹痛の診断の際は、患者さんの病歴や症状があらわれるまでの経緯などの問診も、重要な判断要素となります。
腹部手術を受けたことがあるか、持病の有無、常用している薬、さらに生ものの摂取など食事内容や、家族など自分以外で同じ症状がでていないか等も確認します。
診察では、視診、聴診、打診、触診を行います。
視診 | お腹が膨らみ盛り上がっていないか、手術の傷跡の有無など腹部全体を確認します。 |
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聴診 | 聴診器で腸のぜん動音(腸の音)を聞きますが、音の種類によって病気を鑑別できる場合があります。 腹膜炎などの場合は腸の動きが悪くなるため音が聞こえなくなりますが、腸閉塞では金属音と呼ばれる音が聞こえることがあります。 |
打診 | 指先でお腹を叩いて診察します。腸内にガスが溜まっている場合はポンポンという鼓音がします。 また、叩くと痛みが強くなる場合は腹膜炎の可能性が疑われます。 |
触診 | お腹をリラックスさせた状態で、手でお腹を直接触って診察します。お腹の硬さ、押して痛む場所、しこりの有無などを確認します。 |
問診と身体の診察によって考えられる病気を絞り、確定診断のために次のような検査を選択して行います。
- 血液
- 尿
- 便検査
- 胸部
- 腹部レントゲン検査
- 心電図
- 超音波検査
- CT検査
- MRI検査
- 上部消化管内視鏡検査
- 下部消化管内視鏡検査
腹痛の治療法
検査で病気が診断されれば、それぞれに適した治療法を行っていきます。
大きくは内科的治療と、外科的治療があります。また場合によっては、緊急手術が必要となることがあります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍や、腸閉塞、急性虫垂炎がその例です。手術方法においては、開腹手術や腹腔鏡手術の二つがあり、それぞれの病気や病態に適した方法が選択されます。